の代り、貴女もどうぞ貴族的でない、僕が住《すま》れそうな、実際、相談の出来そうな長屋式のをお心掛けなすって下さい。実はその御様子じゃ、二十円以内の家は念頭にお置きなさらないように見受けたものですから、いささか諷する処あるつもりで、」
 いつの間にか、有名な随神門も知らず知らず通越した、北口を表門へ出てしまった。
 社は山に向い、直ぐ畠で、かえって裏門が町続きになっているが、出口に家が並んでいるから、その前を通る時、主税も黙った。
 夫人はもとより口を開かぬ。
 やがて茶畑を折曲って、小家まばらな、場末の町へ、まだツンとした態度でずんずん入る。
 大巌山の町の上に、小さな溝があるばかり、障子の破《やぶれ》から人顔も見えないので、その時ずッと寄って、
「ものを云って下さいよ。」
「…………」
「夫人《おくさん》、」
「…………」

       十四

 少時《しばらく》――主税ももう口を利こうとは思わない様子になって、別に苦にする顔色《かおつき》でもないが、腕を拱《こまぬ》いた態《なり》で、夫人の一足後れに跟《つ》いて行《ゆ》く。
 裏町の中程に懸ると、両側の家は、どれも火が消えたように
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