黄裏を屈《かが》めて待つ。
冠木門《かぶきもん》は、旧式のままで敷木があるから、横附けに玄関まで曳込むわけには行かない。
男の児《こ》が先へ立って駈出して来る事だろう、と思いながら、主税が帽《ぼうし》を脱いで、雨《あま》あがりの松の傍《わき》を、緑の露に袖擦りながら、格子を潜《くぐ》って、土間へ入ると、天井には駕籠《かご》でも釣ってありそうな、昔ながらの大玄関。
と見ると、正面に一段高い、式台、片隅の板戸を一枚開けて、後《うしろ》の縁から射《さ》す明りに、黒髪だけ際立ったが、向った土間の薄暗さ、衣《きぬ》の色|朦朧《もうろう》と、俤《おもかげ》白き立姿、夫人は待兼ねた体に見える。
会釈もさせず、口も利かさず、見迎えの莞爾《にっこり》して、
「まあ、遅かったわねえ。ああ御苦労よ。」
ちょいと車夫《わかいしゅ》に声を懸けたが、
「さぞ寝坊していらっしゃるだろうと思ったの。さあ、こちらへ。さあ、」
口早に促されて、急いで上る、主税は明《あかる》い外から入って、一倍暗い式台に、高足を踏んで、ドンと板戸に打附《ぶッつか》るのも、菅子は心づかぬまで、いそいそして。
「こちらへ、さあ、ず
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