掛けの端に居て、直ぐにそこから、扉《と》を開けて、小児を迎え入れたので、さては乳母よ、と見ると、もう一人、被布《ひふ》を着た女の子の、キチンと坐って、この陽気に、袖口へ手を引込《ひっこ》めて、首を萎《すく》めて、ぐったりして、その年増の膝に凭《より》かかっていたのがあって、病気らしい、と思ったのが、すなわち話の、目の病《わる》い娘《こ》なのであった。
乳母の目からは、奥に引込んで、夫人の姿は見えないが、自分は居ながら、硝子越に彼方《むこう》から見透《みえす》くのを、主税は何か憚《はば》かって、ちょいちょい気にしては目遣いをしたようだったが、その風を見ても分る、優しい、深切らしい乳母は、太《いた》くお主《しゅう》の盲目《めしい》なのに同情したために、自然《おのず》から気が映ってなったらしく、女の児と同一《おなじ》ように目を瞑《ねむ》って、男の児に何かものを言いかけるにも、なお深く差俯向《さしうつむ》いて、いささかも室の外を窺《うかが》う気色《けしき》は無かったのである。
かくて彼一句、これ一句、遠慮なく、やがて静岡に着くまで続けられた。汽車には太《いた》く倦《うん》じた体で、夫人は腕
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