て》だ。」
 と、半ば、独言《ひとりごと》を云う。折から四五人どやどやと客が入った。それらには目もくれず、
「ほほほ、日本式ではないんだわねえ、貴下、お気には入りますまい。」
「どういたしまして、大恥辱。」
「旅馴れないのは、かえって江戸子《えどっこ》の名誉なんですわ。」
 ボオイが剰銭《つり》を持って来て、夫人の手に渡すのを見て、大照れの主税は、口をつけたばかりの珈琲もそのまま、立ったなりの腰も掛けずに、
「ここへも勘定。」
 傍《そば》へ来て腰を屈《かが》めて、慇懃《いんぎん》に小さな声で、
「御一所に頂戴いたしました、は、」
「飛んでもない、貴女、」
 と今度は主税が火の附くように慌《あわただ》しく急《あせ》って云うのを、夫人は済まして、紙入を帯の間へ、キラリと黄金《きん》の鎖が動いて、
「旅馴れた田舎稼ぎの……」
(女俳優《おんなやくしゃ》)と云いそうだったが、客が居たので、
「女形《おやま》にお任せなさいまし。」
 とすらりと立った丈高う、半面を颯《さっ》と彩る、樺《かば》色の窓掛に、色彩|羅馬《ロオマ》の女神《じょしん》のごとく、愛神《キュピット》の手を片手で曳《ひ》いて、
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