底意なく頷《うなず》いたのを見て、小さな靴を思う様|上下《うえした》に刎《は》ねて、外国人の前へ行《ゆ》くと、小刀と林檎と一緒に放して差置くや否や、にょいと手を伸ばして、小児を抱えて、スポンと床から捩取《もぎと》ったように、目よりも高く差上げて、覚束《おぼつか》ない口で、
「万歳――」
ボオイが愛想に、ハタハタと手を叩いた。客は時に食堂に、この一組ばかりであった。
二
「今のは独逸《ドイツ》人でございますか。」
外客《がいかく》の、食堂を出たあとで、貴婦人は青年に尋ねたのである。会話の英語《イングリッシュ》でないのを、すでに承知していたので、その方の素養のあることが知れる。
青年は椅子をぐるりと廻して、
「僕もそうかと思いましたが、違います、伊太利《イタリイ》人だそうです。」
「はあ、伊太利の、商人ですか。」
「いえ、どうも学者のようです。しかしこっちが学者でありませんから、科学上の談話《はなし》は出来ませんでしたが、様子が、何だか理学者らしゅうございます。」
「理学者、そうでございますか。」
小児《こども》の肩に手を懸けて、
「これの父親《ちち》も、ちとばか
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