と云う思入《おもいれ》で、城を明渡して来ましたがね。
 世の中にゃ、とんだ唐変木も在ったもんで、まだがらくたを片附けてる最中でさ、だん袋を穿きあがった、」
 と云いかけて、主税の扮装《いでたち》を、じろり。
「へへへ、今夜はお前《め》さんも着《や》ってるけれど。まあ、可いや。で何だ、痘痕《あばた》の、お前さん、しかも大面《おおづら》の奴が、ぬうと、あの路地を入って来やあがって、空いたか、空いったか、と云やあがる。それが先生、あいたかった、と目に涙でも何でもねえ。家は空いたか、と云うんでさ。近頃|流行《はや》るけれど、ありゃ不躾《ぶしつけ》だね。お前さん、人の引越しの中へ飛込んで、値なんか聞くのは。たとい、何だ、二ツがけ大きな内へ越すんだって、お飯粒《まんまつぶ》を撒《ま》いてやった、雀ッ子にだって残懐《なごり》は惜《おし》いや、蔦ちゃんなんか、馴染《なじみ》になって、酸漿《ほおずき》を鳴らすと鳴く、流元《ながしもと》の蛙《けえろ》はどうしたろうッて鬱《ふさ》ぐじゃねえか。」
「止せよ、そんな事。」
 と主税は帽子の前を下げる。
「まあさ、そんな中へ来やあがって、お剰《まけ》に、空くのを
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