くれますよ。」
「……罰、罰の当った事をおっしゃる! 私は涙が溢《こぼ》れます、勿体ない。そりゃもう、先生の御意見で夢が覚《さめ》ましたから、生れ代りましたように、魂を入替えて、これから修行と思いましたに、人は怨みません。自分の越度《おちど》だけれど、掏摸《すり》と、どうしたの、こうしたの、という汚名を被《き》ては、人中へは出られません。
先生は、かれこれ面倒だったら、また玄関へ来ておれ、置いてやろう、とおっしゃって下さいますけれども、先生のお手許に居ては、なお掏摸の名が世間に騒《さわが》しくなるばかりです。
卑怯なようですけれど、それよりは当分|地方《いなか》へ引込んで、人の噂も七十五日と云うのを、果敢《はか》ないながら、頼みにします方が、万全の策だ、と思いますから、私は、一日旅行してさえ、新橋、上野の停車場《ステイション》に着くと拝みたいほど嬉しくなります、そんな懐《なつかし》い東京ですが、しばらく分れねばなりません。」
「厭だわ、私、厭、行っちゃ。」
言《ことば》が途絶えると、音がした、釣瓶《つるべ》の雫《しずく》が落ちたのである。
差俯向《さしうつむ》くと、仄《ほの》か
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