ともまた酒飲みの料簡《りょうけん》でしょうか。」
と串戯《じょうだん》のように云って、ちょっと口切《くぎ》ったが、道学者の呆れて口が利けないのに、押被《おっかぶ》せて、
「さっぱりとそうして下さい。」
五十七
「貴下《あなた》、ええ、お言葉ではごわりまするが、スー」と頬の窪むばかりに吸って、礼之進、ねつねつ、……
「さよういたしますると、御門生早瀬子が令嬢を愛すると申して、万一結婚をいたしたいと云うような場合におきましては……でごわりまする……その辺はいかがお計らいなされまする思召《おぼしめし》でごわりまするな。」
「勝手にさせます。」と先生言下に答えた。
これにまた少なからず怯《おびや》かされて、
「しまするというと、貴下は自由結婚を御賛成で。」
「いや、」
「はあ、いかような御趣意に相成りまするか。」
「私は許嫁《いいなずけ》の方ですよ。」と酒井は笑う。
「許嫁? では、早瀬子と、令嬢とは、許嫁でお在《いで》なされますので。」
「決してそんな事はありません。許嫁は、私と私の家内とです。で、二人ともそれに賛成……ですか。同意だったから、夫婦になりましたよ。妙の方
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