の母なども大きにお案じ申しております。どういう御容体でいらっしゃりまするか、私《わたくし》もその、甚だ心配を仕《つかまつ》りまするので、はあ、」
「別に心配なんじゃありません。肺病でも癩病でもないんですから。」
 と先生警抜なことを云って、俯向《うつむ》きざまに、灰を払ったが、左手《ゆんで》を袖口へ掻込《かいこ》んで胸を張って煙を吸った。礼之進は、畏《かしこま》ったズボンの膝を、張肱《はりひじ》の両手で二つ叩いて、スーと云ったばかりで、斜めに酒井の顔を見込むと、
「たかだか風邪のこじれです。」
「その風邪が万病の原《もと》じゃ、と誰でも申すことでごわりまするが、事実《まったく》でな。何分御注意なさらんとなりません。」
 と妙に白けた顔が、燈火に赤く見えて、
「では、さように御病中でごわりましては、御縁女の事に就きまして、御令室とまだ御相談下さります間もごわりませんので?」
 と重々しく素引《そび》きかけると、酒井は事も無げな口吻《くちぶり》。
「いや、相談はしましたよ。」
「ははあ、御相談下さりましたか。それは、」と頤《あご》を揉んで、スーと云って、
「御令室の思召《おぼしめし》はいか
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