てはこの学校の名誉に係りますから、以来、口なんぞ利いてはなりません。宜しいかね。危険だから近寄らんようになさい、何をするか分らんから、あんな奴は。」
 お妙は気を張《はり》つめんと勤むるごとく、熟《じっ》と瞶《みまも》る地図を的に、目を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》って、先刻《さっき》からどんなに堪《こら》えたろう。得《え》忍ばず涙ぐむと、もうはらはらと露になって、紫の包にこぼれた。あわれ主税をして見せしめば、ために命も惜むまじ。

       五十一

 いや、学士二人驚いた事。
「貴娘《あなた》、どうしたんだ。」
 と教頭が椅子から突立《つった》った時は、お妙は始からしっかり握った袂《たもと》をそのまま、白羽二重の肌襦袢の筒袖の肱《ひじ》を円《まろ》く、本の包に袖を重ねて、肩をせめて揉込むばかり顔を伏せて、声は立てずに泣くのであった。
「ええ、どうして泣くです。」
 靴音高く傍《そば》へ寄ると、河野も慌《あわただ》しく立って来て、
「泣いちゃ不可《いけ》ませんなあ、何も悲い事は無いですよ。」
「私は貴娘を叱ったんじゃない。」
「けれども、君の話振がちと穏《おだ
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