勿論、その香《におい》の、二十世紀であるのは言うまでもない。
 お妙は、扉《ドア》に半身を隠して留まる。小使はそのまま向うへ行過ぎる。
 閑耕は、キラリ目金《めがね》を向けて、じろりと見ると、目を細うして、髯《ひげ》の尖《さき》をピンと立てた、頤《あご》が円い。
「こちらへ、」
 と鷹揚《おうよう》に云って、再び済まして書見に及ぶ。
 お妙は扉に附着《くッつ》いたなりで、入口を左へ立って、本の包みを抱いたまま、しとやかに会釈をしたが、あえてそれよりは進まなかった。
「こちらへ。」と無造作なように、今度は書見のまま声をかけたが、落着かれず、またひょいと目を上げると、その発奮《はずみ》で目金が躍る。
 頬桁《ほおげた》へ両手をぴったり、慌てて目金の柄を、鼻筋へ揉込《もみこ》むと、睫毛《まつげ》を圧《おさ》え込んで、驚いて、指の尖を潜《くぐ》らして、瞼《まぶた》を擦《こす》って、
「は、は、は、」と無意味な笑方をしたが、向直って真面目な顔で、
「どうですな。」

       四十七

 もう傍《そば》へ来そうなものと、閑耕教頭が再び、じろりと見ると、お妙は身動きもしないで、熟《じっ》と立っ
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