りの俺の縄張内を胡乱《うろ》ついて、三世相の盗人覗《ぬすっとのぞ》きをするにゃ当るまい。
 その間抜けさ加減だから、露店《ほしみせ》の亭主に馬鹿にされるんだ。立派な土百姓になりゃあがったな、田舎漢《いなかもの》め!」

       四十

 主税はようよう、それも唾《つば》が乾くか、かすれた声で、
「三世相を見ておりましたのは、何も、そんな、そんな訳じゃございません……」とだけで後が続かぬ。
「翻訳でも頼まれたか、前世は牛だとか、午《うま》だとか。」
 と串戯《じょうだん》のような警抜な詰問が出たので、いささか言《ことば》が引立《ひった》って、
「いいえ、実はその何でございまして。その、この間中から、お嬢さんの御縁談がはじまっております、と聞きましたもんですから、」
 小芳はそっと酒井を見た。この間《なか》でも初に聞いた、お妙の縁談と云うのを珍らしそうに。
「ははあ、じゃ何か、妙と、河野英吉との相性を検《しら》べたのかい。」
 果せる哉《かな》、礼之進が運動で、先生は早や平家の公達《きんだち》を御存じ、と主税は、折柄も、我身も忘れて、
「はい、」と云って、思わず先生の顔を見ると、瞼《
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