ぎ》に、紅《くれない》に、寸隙《すきま》なく鏤《ちりば》められた、綾《あや》の幕ぞと見る程に、八重に往来《ゆきか》う人影に、たちまち寸々《ずたずた》と引分けられ、さらさらと風に連れて、鈴を入れた幾千の輝く鞠《まり》となって、八方に投げ交わさるるかと思われる。
 ここに一際夜の雲の濃《こま》やかに緑の色を重ねたのは、隅田へ潮がさすのであろう、水の影か、星が閃《きらめ》く。
 我が酒井と主税の姿は、この広小路の二点となって、浅草橋を渡果てると、富貴竈《ふうきかまど》が巨人のごとく、仁丹が城のごとく、相対して角を仕切った、横町へ、斜めに入って、磨硝子《すりがらす》の軒の燈籠の、媚《なまめ》かしく寂寞《ひっそり》して、ちらちらと雪の降るような数ある中を、蓑《みの》を着た状《さま》して、忍びやかに行くのであった。


     柏家

       三十六

 やがて、貸切と書いた紙の白い、その門の柱の暗い、敷石のぱっと明《あかる》い、静粛《しん》としながら幽《かすか》なように、三味線《さみせん》の音《ね》が、チラチラ水の上を流れて聞える、一軒|大構《おおがまえ》の料理店の前を通って、三つ四つ軒
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