の橋を、今夜に限って、高い処のように、危っかしく渡ると、件《くだん》の売卜者《うらない》の行燈《あんどう》が、真黒《まっくろ》な石垣の根に、狐火かと見えて、急に土手の松風を聞く辺《あたり》から、そろそろ足許が覚束なくなって、心も暗く、吐胸《とむね》を支《つ》いたのは、お蔦の儀。
ひとえに御目玉の可恐《おそろし》いのも、何を秘《かく》そう繻子《しゅす》の帯に極《きわま》ったのであるから、これより門口へかかる……あえて、のろけるにしもあらずだけれども、自分の跫音《あしおと》は、聞覚えている。
その跫音が、他の跫音と共に、澄まして音信《おとず》れれば、(お帰んなさい。)で、出て来るは定のもの。分けて、お妙の事を、やきもき気を揉んでいる処。それが為にこうして出向いた、真砂町の様子を聞き度さに、特《こと》に、似たもの夫婦の譬《たとえ》、信玄流の沈勇の方ではないから、随分|飜然《ひらり》と露《あらわ》れ兼ねない。
いざ、露れた場合には……と主税は冷汗になって、胸が躍る。
あいにく例《いつも》のように話しもしないで、ずかずか酒井が歩行《ある》いたので、とこう云う間《ひま》もなかった、早や我家
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