よ。難有《ありがた》く思え、日傭取《ひようとり》のお職人様が月給取に謝罪《あやま》ったんだ。
 いつ出来た規則だか知らねえが、股《もも》ッたア出すなッてえ、肥満《ふと》った乳母《おんば》どんが焦《じれ》ッたがりゃしめえし、厭味ッたらしい言分だが、そいつも承知で乗ってるからにゃ、他様《ほかさま》の足を踏みゃ、引摺下《ひきずりおろ》される御法だ、と往生してよ。」
 と、車掌にひょこと頭を下げて、
「へいこら、と下りてやりゃ、何だ、掏摸だ。掏摸たア何でえ。」
 また礼之進に突懸《つっかか》る。

       三十四

「掏《す》られた、盗《と》られたッて、幾干《いくら》ばかり台所の小遣《いりよう》をごまかして来やあがったか知らねえけれど、汝《てめえ》がその面《つら》で、どうせなけなしの小遣だろう、落しっこはねえ。
 へん、鈍漢《のろま》。どの道、掏られたにゃ違えはねえが、汝がその間抜けな風で、内からここまで蟇口《がまぐち》が有るもんかい、疾《とっ》くの昔にちょろまかされていやあがったんだ。
 さあ、お目通りで、着物を引掉《ひっぷる》って神田児《かんだッこ》の膚合《はだあい》を見せてやらあ、
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