出、出しおろう、」
と震え声で、
「馬鹿!」と一つ極《き》めつけた。
「どうぞ、御免なすって、真平、へい……」
と革に縋《すが》ったまま、ぐったりとなって、悄気《しょげ》返った職人の状《さま》は、消えも入りたいとよりは、さながら罪を恥じて、自分で縊《くびくく》ったようである。
「コリャ」とまた怒鳴って、満面の痘痕を蠢《うごめ》かして、堪《こら》えず、握拳《にぎりこぶし》を挙げてその横頬《よこづら》を、ハタと撲《ぶ》った。
「あ、痛《いた》、」
と横に身を反《そ》らして、泣声になって、
「酷《ひ》、酷《ひど》うござんすね……旦那、ア痛々《たた》、」
も一つ拳で、勝誇って、
「酷いも何も要ったものか。」
哄《どっ》と立上る多人数《たにんず》の影で、月の前を黒雲が走るような電車の中。大事に革鞄《かばん》を抱きながら、車掌が甲走った早口で、
「御免なさい、何ですか、何ですか。」
三十三
カラアの純白《まっしろ》な、髪をきちんと分けた紳士が、職人体の半纏着を引捉《ひっとら》えて、出せ、出せ、と喚《わめ》いているからには、その間の消息一目して瞭然《りょうぜん》たりで、
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