「何だか知らんが、さんざ汚れて引断《ひっち》ぎれているじゃないか。」
「でげすがな、絵が整然《ちゃん》としておりますでな、挿絵は秀蘭斎貞秀で、こりゃ三世相かきの名人でげす。」
と出放題な事を云う。相性さえ悪かったら、主税は二十銭のその二倍でもあえて惜くはなかったろう。
「余り高価いよ。」と立ちかける。
「お幾干で? ええ、旦那。」
と引据《ひっす》えるように圧《おさ》えて云った。
「半分か。」
「へい。」
「それだって廉《やす》くはない。」
三十
亭主は膝を抱いて反身《そりみ》になり、禅の問答持って来い、という高慢な顔色《がんしょく》で。
「半|価値《ねだん》は酷《ひど》うげす。植木屋だと、じゃあ鉢は要りませんか、と云って手を打つんでげすがな。画だけ引剥《ひっぺが》して差上げる訳にも参りませんで。どうぞ一番《ひとつ》御奮発を願いてえんで。五銭や十銭、旦那方にゃ何だけの御散財でもありゃしません。へへへへへ、」
「一体高過ぎる、無法だよ。」
と主税はその言い種《ぐさ》が憎いから、ますます買う気は出なくなる。
「でげすがな、これから切通しの坂を一ツお下りになりゃ、五
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