う》が詩《し》に、屏風誤點惑孫郎《びやうぶあやまりてんじてそんらうをまどはす》。團扇草書輕内史《だんせんのさうしよないしをかろんず》。
 吾《われ》聞《き》く、魏《ぎ》の明帝《めいてい》、洛水《らくすゐ》に遊《あそ》べる事《こと》あり。波《なみ》蒼《あを》くして白獺《はくだつ》あり。妖婦《えうふ》の浴《よく》するが如《ごと》く美《び》にして愛《あい》す可《べ》し。人《ひと》の至《いた》るを見《み》るや、心《こゝろ》ある如《ごと》くして直《たゞ》ちに潛《かく》る。帝《てい》頻《しきり》に再《ふたゝ》び見《み》んことを欲《ほつ》して終《つひ》に如何《いかん》ともすること能《あた》はず。侍中《じちう》進《すゝ》んで曰《いは》く、獺《だつ》や鯔魚《しぎよ》を嗜《たし》む、猫《ねこ》にまたゝびと承《うけたまは》る。臣《しん》願《ねがは》くは是《これ》を能《よ》くせんと、板《いた》に畫《ゑが》いて兩生《りやうせい》の鯔魚《しぎよ》を躍《をど》らし、岸《きし》に懸《か》けて水《みづ》を窺《うかゞ》ふ。未《いま》だ數分《すうふん》ならざるに、群獺《ぐんだつ》忽《たちま》ち競逐《きそひお》うて、勢《いき
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