眉かくしの霊
泉鏡花

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)木曾街道《きそかいどう》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一五八|哩《マイル》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「火+共」、第3水準1−87−42]《おこ》って、
−−

      一

 木曾街道《きそかいどう》、奈良井《ならい》の駅は、中央線起点、飯田町《いいだまち》より一五八|哩《マイル》二、海抜三二〇〇尺、と言い出すより、膝栗毛《ひざくりげ》を思う方が手っ取り早く行旅の情を催させる。
 ここは弥次郎兵衛《やじろべえ》、喜多八《きだはち》が、とぼとぼと鳥居峠《とりいとうげ》を越すと、日も西の山の端《は》に傾きければ、両側の旅籠屋《はたごや》より、女ども立ち出《い》でて、もしもしお泊まりじゃござんしないか、お風呂《ふろ》も湧《わ》いていずに、お泊まりなお泊まりな――喜多八が、まだ少し早いけれど……弥次郎、もう泊まってもよかろう、のう姐《ねえ》さん――女、お泊まりな
次へ
全66ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング