し……どころでない、魂魄《こんぱく》をひょいと掴《つか》んで、血の道の薬に持って行《ゆ》く。それも、もう他事《ひとごと》ではない、既に今朝の雪の朝茶の子に、肝まで抜かれて、ぐったりとしているんだ。聞けば聞得で、なお有難い。その様子じゃ――調ったとして婚礼の時は、薙刀《なぎなた》の先払い、新夫人は錦《にしき》の帯に守刀というんだね。夢にでも見たいよ、そんなのを。……
……といううちにも、糸|的《こう》、糸的《きみ》はひとりで目の覚めた顔をして澄ましているが、内で話した、外で逢ったという気振《けぶり》も見せない癖に、よく、そんな、……お京さんいい名だなあ、その娘《こ》の駿河台の研学の科目なぞを知っているね。あいつ、高慢だことの、ツンとしているのと、口でけなして何とかじゃないのかい。刺違えるならここで頼む。お互に怪我はしても、生命《いのち》に別条のない決闘なら、立処《たちどころ》にしようと云うんだ。俺はもう目が据《すわ》っている、真剣だよ。」
「対手《あいて》にならないが、次第《わけ》は話そう。――それ、弁持の甘き、月府の酸《す》きさ、誰某《たれそれ》と……久須利苦生の苦きに至るまで、目下
前へ
次へ
全151ページ中98ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング