汚れた、頽れた、浅ましい。……塩みがきの私らを大きにお世話だ、お茶でもあがれ、とべっかっこをして見せた。」
「そうだろう、べっかっこでなくっちゃ筋は通らない。まともに弁じて、汚れた売女を憎んだのじゃない、あわれんだに……無理はないから。」
「勿論、つけた題が『べっかっこ。』さ――」
「見たいな、糸七……本名か。」
「まさか――署名は――江戸町河岸の、紫。おなじ雑誌の翌月の雑録さ。令嬢は随。……野郎は雑。――編輯部の取扱いが違うんだ。」
「辛うじて一坂越したよ、お互に、静かに、静かに。」
 弦光は一息ふッ、日のあたる窓下の机の埃《ほこり》を吹き、吹いた後を絹切で掃《はら》った。

       二十八

「それでも、上杉先生の、詞成堂――台町の山の屋敷の庭続き崖下にある破《やれ》借家……矢野も二三度遊びに行ったね、あの塾の、小部屋小部屋に割居して、世間ものの活字にはまだ一度も文選されない、雑誌の半面、新聞の五行でも、そいつを狙って、鷹の目、梟《ふくろう》の爪で、待機中の友達のね、墨色の薄いのと、字の拙《まず》いのばかり、先生にまだしも叱正を得て、色の恋のと、少しばかり甘たれかかると、たち
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