かん》だから炎天の蚯蚓《みみず》のようだ、焦げて残っている、と云った処で、真珠を食ったあとだから、気が驕《おご》って、そんなものには、構っておられん。
本文を取急ごう。
その主意たるや、要するに矢野弦光が、その日、今朝、真《しん》もって、月村一雪、お京さんの雪の姿に惚れたのである。
一升徳利の転がったを枕にして、投足の片膝組みの仰向けで、酒の酔を陰に沈めて、天井を睨んでいたのが、むっくり、がばと起きると、どたりと凭掛《よりかか》ったまま、窓下の机をハタと打った。崖下の雪解の音は余所《よそ》よりも。……
いま、障子外の雨落の雫《しずく》がこの響きで刎《は》ねそうであった。
「糸|的《こう》。」
「ええ、驚いた。」
この方は、袖よじれに横倒れで、鉄張りの煙管を持った手を投出したまま、吸殻を忘れたらしい、畳に焼焦――最も紳士の恥ずべきこと――を拵《こしら》えながら、うとうとしていた。
「呼んだぐらいで驚いてくれちゃ困る。よ、糸|的《こう》、いい名だなあ、従兄弟《いとこ》に聞えて、親身のようだ。そのつもりで聞いてくれよ。ああ私は実は酔わん、酔えなかったんだよ。生れて三十年にして、いま
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