奇絶、奇絶。)妙……とお言いよ。」
「言えないよ。女作家の事はまた、べつとして……馬鹿々々しいよ。」
「三馬(式亭)が馬鹿々々しい、といって……女郎買に振られて帰ったこの朝だ。俥賃《くるまちん》なしの大雪に逢って、飜訳ものの、トルストイや、ツルゲネーフと附合ったり、ゲーテ、シルレルを談じたって、何の役に立つものか。そこへ行《ゆ》くと三馬だ。お馴染《なじみ》がいにいくらか、景気をつけてくれる。――「人間万事嘘誕計《にんげんばんじうそばっかり》」――骨董と牛骨が向島へ雪見の洒落で、ふられた雪を吹飛ばそう。」
「外聞の悪いことをいうなよ、雪は知らないが、ふられたのは俺じゃないぜ。」
 と、大島の小袖に鉄無地の羽織で、角打の紐を縦に一扱《ひとしご》き扱いたのは、大学法科出の新学士。肩書の分限《ぶげん》に依って職を求むれば、速《すみやか》に玄関を構えて、新夫人にかしずかるべき処を、僻《へき》して作家を志し、名は早く聞えはするが、名実あい合《かな》わず、砕いて言えば収入《みいり》が少いから、かくの始末。藍染川と、忍川の、晴れて逢っても浮名の流れる、茅町《かやちょう》あたりの借屋に帰って、吉原がえり
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