ひいき》の、中坂下のお娘ごのお達引で、金子《きんす》、珊瑚《さんご》の釵《かんざし》の、ご心配はもうなくなりましたと申したのは、実は中洲、月村様のお厚情《こころざし》。京子様、その事堅くお口どめゆえ、秘《かく》してはおりましたが、このたび帰国の上は、かれこれ、打明けます折もつい伸々《のびのび》と心苦しく、お京様とは幾久しきおつきあい、何かにつけ、お胸にそのお含み、なによりと存じ…………
 ――もう可《い》い。[#地から2字上げ]――(完)

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作者自から評して云う、この(結び)には拵えた作意がある。誰方にもよく解る。……お滝が手紙を渡す条《すじ》である。纏《まとま》りがいいようにと思ったが、見えすいた筋立らしい、こんな事はしないが好《い》い。――実は、お伽堂の女房の手紙が糸七に届いたのは、過ぐること二月ばかり、お京さんと、野土青鱗(あおだいしょうめ)画伯と、結婚式の済んだ後だったのだそうである。
[#ここで字下げ終わり]
[#地から1字上げ]昭和十四(一九三九)年三月



底本:「泉鏡花集成10」ちくま文庫、筑摩書房
   1996(平成8)年7月24日第1刷発
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