いようはありません、失礼しました。」
お京は薄い桔梗色《ききょういろ》の襟を深く、俯向《うつむ》いて、片手で胸をおさえて黙っていたが、島田を簪《かんざし》で畳の上へ縫ったように手をついた。
「辻町さん……私を折檻《せっかん》して、折檻して下さいまし。折檻して下さいまし。」
「何、折檻。」
「ええ。」
「折檻、あなたはおよそ折檻ということを、知っていますか。あなたの身で、そのおからだで折檻という言葉をさえ知っていますか、本では読み話では聞いて、それは知っていらっしゃるかも知れませんが、何をいうんです。」
――一昨年《おととし》か、一昨々年《さきおととし》、この人の筆に、かくもの優しい、たおやかな娘に、蝦蟇《がま》の面《つら》の「べっかっこ。」、それも一つの折檻か、知らず、悪たれ小僧の礫《つぶて》をぶつけた――悪戯《いたずら》を。
糸七はすくむよりも、恐れるよりも、ただ、悄然《しょうぜん》とするのであった。
三十七
上げた顔は、血が澄んで、色の白さも透通る……お京は片袖を膝の上に、
「何よりか、あの、何より先に、申訳がありません。あなたのお内へお許しも受けないで、
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