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薄 勿体《もったい》ないことを御意遊ばす。――まあ、お前様、あんなものを召しまして。
夫人 似合ったかい。
薄 なおその上に、御前様《ごぜんさま》、お痩《や》せ遊ばしておがまれます。柳よりもお優しい、すらすらと雨の刈萱《かるかや》を、お被《か》け遊ばしたようにござります。
夫人 嘘ばっかり。小山田の、案山子《かかし》に借りて来たのだものを。
薄 いいえ、それでも貴女《あなた》がめしますと、玉、白銀《しろがね》、揺《ゆるぎ》の糸の、鎧《よろい》のようにもおがまれます。
夫人 賞《ほ》められてちっと重くなった。(蓑を脱ぐ)取っておくれ。
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撫子、立ち、うけて欄干にひらりと掛く。
蝶の数、その蓑に翼を憩う。……夫人、獅子頭に会釈しつつ、座に、褥《しとね》に着く。脇息《きょうそく》。
侍女たちかしずく。
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少し草臥《くたび》れましたよ。……お亀様はまだお見えではなかったろうね。
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薄 はい、お姫様《ひいさま》は、やがてお入《い》りでござりましょう
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