条《ひとすじ》の征矢、手にまた一条の矢を取る。下より射たるを受けたるなり)推参な。
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――たちまち鉄砲の音、あまたたび――
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薄 それ、皆さん。
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侍女等、身を垣にす。
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朱の盤 姥殿、確《しっか》り。(姫を庇《かぼ》うて大手を開く。)
亀姫 大事ない、大事ない。
夫人 (打笑む)ほほほ、皆が花火線香をお焚《た》き――そうすると、鉄砲の火で、この天守が燃えると思って、吃驚《びっくり》して打たなくなるから。
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――舞台やや暗し。鉄砲の音|止《や》む――――
夫人、亀姫と声を合せて笑う、ほほほほほ。
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夫人 それ、御覧、ついでにその火で、焼けそうな処を二三|処《ヶしょ》焚《や》くが可《い》い、お亀様の路《みち》の松明《たいまつ》にしようから。
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舞台暗し。
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