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蓑《みの》を取って肩に装う、美しき胡蝶《こちょう》の群、ひとしく蓑に舞う。颯《さっ》と翼を開く風情す。
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それ、人間の目には、羽衣を被《き》た鶴に見える。
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ひらりと落す特、一羽の白鷹|颯《さっ》と飛んで天守に上るを、手に捕う。
――わっと云う声、地より響く――
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亀姫 お涼しい、お姉様《あねえさま》。
夫人 この鷹ならば、鞠を投げてもとりましょう。――沢山《たんと》お遊びなさいまし。
亀姫 あい。(嬉しげに袖に抱《いだ》く。そのまま、真先《まっさき》に階子《はしご》を上る。二三段、と振返りて、衝《つ》と鷹を雪の手に据うるや否や)虫が来た。
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云うとともに、袖を払って一筋の征矢《そや》をカラリと落す。矢は鷹狩の中《うち》より射掛けたるなり。
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夫人 (斉《ひと》しくともに)む。(と肩をかわし、身を捻《ひね》って背向《そがい》になる、舞台に面《おもて》を返す時、口に一
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