かせんけんげき》を降らすこと電光の如くなり。
盤石《ばんじゃく》巌《いわお》を飛ばすこと春の雨に相同じ。
然《しか》りとはいえども、天帝の身には近づかで、
修羅かれがために破らる。
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――お立ち――、(陰より諸声《もろごえ》。)
手早く太刀を納め、兜をもとに直す、一同つい居る。
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亀姫 お姉様《あねえさま》、今度は貴方が、私へ。
夫人 はい。
舌長姥 お早々と。
夫人 (頷《うなず》きつつ、連れて廻廊にかかる。目の下|遥《はるか》に瞰下《みおろ》す)ああ、鷹狩が帰って来た。
亀姫 (ともに、瞰下す)先刻《さっき》私が参る時は、蟻のような行列が、その鉄砲で、松並木を走っていました。ああ、首に似た殿様が、馬に乗って反返《そりかえ》って、威張って、本丸へ入って来ますね。
夫人 播磨守さ。
亀姫 まあ、翼の、白い羽の雪のような、いい鷹を持っているよ。
夫人 おお。(軽く胸を打つ)貴女。(間)あの鷹を取って上げましょうね。
亀姫 まあ、どうしてあれを。
夫人 見ておいで、、それは姫路の、富だもの。
[#こ
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