ょうどあるちょうどある。いで、お肴《さかな》を所望しょう。……などか利験のなかるべき。
桔梗 その利験ならござんしょう。女郎花さん、撫子さん、ちょっと、お立ちなさいまし。
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両女《ふたり》立つ。
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ここをどこぞと、もし人問わば、ここは駿河《するが》の
府中の宿よ、人に情《なさけ》を掛川の宿よ。雉子《きじ》の雌鳥《めんどり》
ほろりと落いて、打ちきせて、しめて、しょのしょの
いとしよの、そぞろいとしゅうて、遣瀬《やるせ》なや。
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朱の盤 やんややんや。
女郎花 今度はお先達、さあ。
葛 貴方《あなた》がお立ちなさいまし。
朱の盤 ぼろぼん、ぼろぼん。此方《こなた》衆|思《おもい》ざしを受きょうならば。
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侍女五人扇子を開く、朱の盤杯を一順す。すなわち立つ。腰なる太刀をすらりと抜き、以前の兜を切先《きっさき》にかけて、衝《つ》と天井に翳《かざ》し、高脛《たかずね》に拍子を踏んで――
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戈※[#「金+延」、第3水準1−93−16]剣戟《
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