れ山伏、これ、帰り途《みち》に舐《な》められさっしゃるな。(とぺろりと舌。)
朱の盤 (頭を抱う)わあ、助けてくれ、角が縮まる。
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侍女たち笑う。
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舌長姥 さ、お供をいたしましょうの。
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夫人を先に、亀姫、薄と女《め》の童《わらわ》等、皆行《ゆ》く。五人の侍女と朱の盤あり。
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桔梗 お先達、さあさあ、お寛《くつろ》ぎなさいまし。
朱の盤 寛がいで何とする。やあ、えいとな。
萩 もし、面白いお話を聞かして下さいましな。
朱の盤 聞かさいで何とする。(扇を笏《しゃく》に)それ、山伏と言っぱ山伏なり。兜巾《ときん》と云っぱ兜巾なり。お腰元と言っぱ美人なり。恋路と言っぱ闇夜《やみよ》なり。野道|山路《やまみち》厭《いと》いなく、修行積んだる某《それがし》が、このいら高の数珠《じゅず》に掛け、いで一祈り祈るならば、などか利験《りげん》のなかるべき。橋の下の菖蒲《しょうぶ》は、誰が植えた菖蒲ぞ、ぼろぼん、ぼろぼん、
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