脇に、柱をめぐりて、内を覗《のぞ》き、女童の戯《たわむ》るるを視《み》つつ破顔して笑う
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朱の盤 かちかちかちかち。
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歯を噛鳴《かみな》らす音をさす。女童等、走り近《ちかづ》く時、面《つら》を差寄せ、大口|開《あ》く。
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もおう!(獣の吠《ほ》ゆる真似して威《おど》す。)
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女董一 可厭《いや》な、小父《おじ》さん。
女童二 可恐《こわ》くはありませんよ。
朱の盤 だだだだだ。(濁れる笑《わらい》)いや、さすがは姫路お天守の、富姫御前の禿《かむろ》たち、変化心《へんげごころ》備わって、奥州第一の赭面《あかつら》に、びくともせぬは我折《がお》れ申す。――さて、更《あらた》めて内方《うちかた》へ、ものも、案内を頼みましょう。
女童三 屋根から入った小父さんはえ?
朱の盤 これはまた御挨拶《ごあいさつ》だ。ただ、猪苗代から参ったと、ささ、取次、取次。
女童一 知らん。
女童三 べいい。(赤べろする。)
朱の盤
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