二世の契
泉鏡花

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)一棟《ひとむね》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)十七八|町《ちょう》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1−91−26]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ぶう/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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        一

 真中に一棟《ひとむね》、小さき屋根の、恰《あたか》も朝凪《あさなぎ》の海に難破船の俤《おもかげ》のやう、且《か》つ破れ且つ傾いて見ゆるのは、此《こ》の広野《ひろの》を、久しい以前汽車が横切《よこぎ》つた、其《そ》の時分《じぶん》の停車場《ステエション》の名残《なごり》である。
 路《みち》も纔《わずか》に通ずるばかり、枯れても未《ま》だ葎《むぐら》の結《むす》ぼれた上へ、煙の如く降りかゝる小雨《こさめ》を透かして、遠く其の寂《さび》しい状《さま》を視《なが》めながら
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