に居る。」と半狂乱、桂木はつゝと出た。
「や、」「や、」と声をかけ合せると、早《は》や、我が身体《からだ》は宙に釣《つ》られて、庭の土に沈むまで、※[#「てへん+堂」、第4水準2−13−41]《どう》とばかり。
 桂木は投落《なげおと》されて横になつたが、死を極《きわ》めて起返《おきかえ》るより先に、これを見たか婦人の念力、袖《そで》の折《おり》目の正しきまで、下着は起きて、何となく、我を見詰《みつ》むる風情《ふぜい》である。
「静まれ、無体《むたい》なことを為《し》申《もう》す勿《な》。」
 姿は見えぬが巨人の声にて、
「客人《きゃくじん》何も謂《い》はぬ。
 唯《ただ》御身達《おみたち》のやうなものは、活《い》けて置かぬが夥間《なかま》の掟《おきて》だ。」
 桂木は舌しゞまりて、
「…………」ものも言はれず。
「斬《き》つ了《ちま》へ! 眷属等《けんぞくども》。」
 きらり/\と四振《よふり》の太刀《たち》、二刀《ふたふり》づゝを斜《ななめ》に組んで、彼方《かなた》の顋《あぎと》と、此方《こなた》の胸、カチリと鳴つて、ぴたりと合せた。
 桂木は切尖《きっさき》を咽喉《のど》に、剣《
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