じ》った。雀同志は、突合《つつきあ》って、先を争って狂っても、その目白鳥にはおとなしく優しかった。そして目白鳥は、欲しそうに、不思議そうに、雀の飯《いい》を視《なが》めていた。
私は何故《なぜ》か涙ぐんだ。
優しい目白鳥は、花の蜜に恵まれよう。――親のない雀は、うつくしく愛らしい小鳥に、教えられ、導かれて、雪の不安を忘れたのである。
それにつけても、親雀は何処《どこ》へ行《ゆ》く。――
――去年七月の末であった。……余り暑いので、愚《ぐ》に返って、こうどうも、おお暑いでめげては不可《いけな》い。小児《こども》の時は、日盛《ひざかり》に蜻蛉《とんぼ》を釣ったと、炎天に打《ぶ》つかる気で、そのまま日盛《ひざかり》を散歩した。
その気のついでに、……何となく、そこいら屋敷町の垣根を探して(ごんごんごま)が見たかったのである。この名からして小児《こども》で可《い》い。――私は大好きだ。スズメノエンドウ、スズメウリ、スズメノヒエ、姫百合《ひめゆり》、姫萩《ひめはぎ》、姫紫苑《ひめしおん》、姫菊《ひめぎく》の※[#「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1−91−26]《ろう》たけた称《
前へ
次へ
全41ページ中29ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング