て、瓢箪ぶっくりこ、なぞは何でもない。時とすると、塀の上に、いま睦《むつま》じく二羽|啄《ついば》んでいたと思う。その一羽が、忽然《こつねん》として姿を隠す。飛びもしないのに、おやおやと人間の目にも隠れるのを、……こう捜すと、いまいた塀の笠木《かさぎ》の、すぐ裏へ、頭を揉込《もみこ》むようにして縦に附着《くッつ》いているのである。脚がかりもないのに巧《たくみ》なもので。――そうすると、見失った友の一羽が、怪訝《けげん》な様子で、チチと鳴き鳴き、其処《そこ》らを覗《のぞ》くが、その笠木のちょっとした出張《でっぱ》りの咽《のど》に、頭が附着《くッつ》いているのだから、どっちを覗いても、上からでは目に附かない。チチッ、チチッと少時《しばらく》捜して、パッと枇杷《びわ》の樹へ飛んで帰ると、そのあとで、密《そっ》と頭を半分出してきょろきょろと見ながら、嬉《うれ》しそうに、羽を揺《ゆす》って後から颯《さっ》と飛んで行く。……惟《おも》うに、人の子のするかくれんぼである。
さて、こうたわいもない事を言っているうちに――前刻《さっき》言った――仔どもが育って、ひとりだち、ひとり遊びが出来るようになる
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