て、ちょっと末《うら》を余して垂下《たれさが》る。すぐに、くるりと腹を見せて、葉裏《はうら》を潜《くぐ》ってひょいと攀《よ》じると、また一羽が、おなじように塀の上からトンと下りる。下りると、すっと枝に撓《しな》って、ぶら下るかと思うと、飜然《ひらり》と伝う。また一羽が待兼《まちか》ねてトンと下りる。一株の萩《はぎ》を、五、六羽で、ゆさゆさ揺《ゆす》って、盛《さかり》の時は花もこぼさず、嘴《はし》で銜《くわ》えたり、尾で跳ねたり、横顔で覗《のぞ》いたり、かくして、裏おもて、虫を漁《あさ》りつつ、滑稽《おど》けてはずんで、ストンと落ちるかとすると、羽をひらひらと宙へ踊って、小枝の尖《さき》へひょいと乗る。
水上《みなかみ》さんがこれを聞いて、莞爾《にっこり》して勧めた。
「鞦韆《ぶらんこ》を拵《こしら》えてお遣《や》んなさい。」
邸《やしき》の庭が広いから、直ぐにここへ気がついた。私たちは思いも寄らなかった。糸で杉箸《すぎばし》を結《ゆわ》えて、その萩の枝に釣った。……この趣《おもむき》を乗気《のりき》で饒舌《しゃべ》ると、雀の興行をするようだから見合わせる。が、鞦韆《ぶらんこ》に乗っ
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