ざる》でその南の縁《えん》へ先ず伏せた。――ところで、生捉《いけど》って籠に入れると、一時《ひととき》と経《た》たないうちに、すぐに薩摩芋《さつまいも》を突《つッ》ついたり、柿を吸ったりする、目白鳥《めじろ》のように早く人馴れをするのではない。雀の児《こ》は容易《たやす》く餌《え》につかぬと、祖母にも聞いて知っていたから、このまだ草にふらついて、飛べもしない、ひよわなものを、飢えさしてはならない。――きっと親雀が来て餌《え》を飼《か》おう。それには、縁《えん》では可恐《こわ》がるだろう。……で、もとの飛石の上へ伏せ直した。
母鳥《ははどり》は直ぐに来て飛びついた。もう先刻《さっき》から庭樹《にわき》の間を、けたたましく鳴きながら、あっちへ飛び、こっちへ飛び、飛騒《とびさわ》いでいたのであるから。
障子《しょうじ》を開けたままで覗《のぞ》いているのに、仔《こ》の可愛さには、邪険な人間に対する恐怖も忘れて、目笊の周囲を二、三尺、はらはらくるくると廻って飛ぶ。ツツと笊《ざる》の目へ嘴《はし》を入れたり、颯《さっ》と引いて横に飛んだり、飛びながら上へ舞立《まいた》ったり。そのたびに、笊の中
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