敷へ飛込《とびこ》んで戸惑いするのを掴《つかま》えると、掌《てのひら》で暴れるから、このくらい、しみじみと雀の顔を見た事はない。ふっくりとも、ほっかりとも、細い毛へ一つずつ日光を吸込《すいこ》んで、おお、お前さんは飴《あめ》で出来ているのではないかい、と言いたいほど、とろんとして、目を眠っている。道理こそ、人の目と、その嘴《はし》と打撞《ぶつか》りそうなのに驚きもしない、と見るうちに、蹈《ふま》えて留《とま》った小さな脚がひょいと片脚、幾度も下へ離れて辷《すべ》りかかると、その時はビクリと居直《いなお》る。……煩《わずら》って動けないか、怪我《けが》をしていないかな。……

 以前、あしかけ四年ばかり、相州逗子《そうしゅうずし》に住《すま》った時(三太郎《さんたろう》)と名づけて目白鳥《めじろ》がいた。
 桜山《さくらやま》に生れたのを、おとりで捕った人に貰《もら》ったのであった。が、何処《どこ》の巣にいて覚えたろう、鵯《ひよ》、駒鳥《こまどり》、あの辺にはよくいる頬白《ほおじろ》、何でも囀《さえず》る……ほうほけきょ、ほけきょ、ほけきょ、明《あきら》かに鶯《うぐいす》の声を鳴いた。目
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