《いっとき》に三組《みくみ》も四組《よくみ》もはじまる事がある。卯《う》の花を掻乱《かきみだ》し、萩《はぎ》の花を散らして狂う。……かわいいのに目がないから、春も秋も一所《いっしょ》だが、晴の遊戯《あそび》だ。もう些《ちっ》と、綺麗《きれい》な窓掛《まどかけ》、絨毯《じゅうたん》を飾っても遣《や》りたいが、庭が狭いから、羽とともに散りこぼれる風情《ふぜい》の花は沢山ない。かえって羽について来るか、嘴《くちばし》から落すか、植えない菫《すみれ》の紫が一本《ひともと》咲いたり、蓼《たで》が穂を紅《あか》らめる。
ところで、何のなかでも、親は甘いもの、仔はずるく甘ッたれるもので。……あの胸毛の白いのが、見ていると、そのうちに立派に自分で餌《え》が拾えるようになる。澄ました面《つら》で、コツンなどと高慢に食べている。いたずらものが、二、三羽、親の目を抜いて飛んで来て、チュッチュッチュッとつつき合《あい》の喧嘩《けんか》さえ遣《や》る。生意気《なまいき》にもかかわらず、親雀がスーッと来て叱《しか》るような顔をすると、喧嘩の嘴《くちばし》も、生意気な羽も、忽《たちま》ちぐにゃぐにゃになって、チイ
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