、下屋を這出しました時が、なお術のうござりましてござります。」
「ほほほ可厭《いや》な、この人は。……最初はな、内証で情婦《いろ》に逢やはるより何の余所《よそ》の人でないものを、私の姿を見て隠れやはった心の裡《うち》が、水臭いようにあって、口惜《くやし》いと思うたけれど、な、……手を支《つ》いて詫《わび》言《い》やはる……その時に、門《かど》のとまりに、ちょんと乗って、むぐむぐ柿を頬張っていた、あの、大《おおき》な猿が、土間へ跳下《とびお》りて、貴下《あんた》と一所に、頭を土へ附けたのには、つい、おろおろと涙が出たえ。
柿は、貴下の土産やったそうに聞くな。
天王寺の境内で、以前舞わしてやった、あの猿。どないなった問うた時、ちと知縁のものがあって、その方へ、とばかり言うて、預けた先方《さき》を話しなはらん、住吉辺の田舎へなと思うたら、大切《だいじ》な許《とこ》に居るやもの。
おお、それなりで、貴方《あんた》たちを、私が方へ、無理に連れもうて来てしもうたが、うっかりしたな、お爺はんは、今夜は私の市女笠持って附いてもらうよって、それも留守。あの、猿はどうしたやろな。」
「はい、」
と
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