》を衆に抽《ぬ》き、解き揃えた黒髪は、夥間《なかま》の丈を圧《おさ》えたけれども、一人|渠《かれ》は、住吉の式に連《つらな》る事をしなかった。
 間際に人が欠けては事が済まぬ。
 世話人一同、袴腰を捻返《ねじかえ》して狼狽《うろた》えたが、お珊が思うままな金子《かね》の力で、身代りの婦《おんな》が急に立った。
 で、これのみ巫女《みこ》の手を借りぬ、容色《きりょう》も南地《なんち》第一人。袴の色の緋よりも冴えた、笹紅《ささべに》の口許《くちもと》に美しく微笑《ほほえ》んだ。
「多一さん、美津《みい》さん、ちょっと、どないな気がおしやす。」
 唐織衣《からおりごろも》に思いもよらぬ、生地《きじ》の芸妓《げいこ》で、心易げに、島台を前に、声を掛ける。
 素袍の紗《しゃ》に透通る、燈《ともし》の影に浅葱《あさぎ》とて、月夜に色の白いよう、多一は照らされた面色《おももち》だった。
「なあ?」とお珊が聞返す、胸を薄く数を襲《かさ》ねた、雪の深い襲ねの襟に、檜扇を取って挿していた。
「御寮人様。」
 と手を下げて、
「何も、何も、私《わたくし》は申されませぬ。あの、ただ夢のようにござります。」とや
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