しい五色の霧が、冷々《ひやひや》と掛《かか》るようです。……変に凄《すご》いようですぜ。亀が昇天するのかも知れません。板に上ると、その機会《はずみ》に、黒雲を捲起《まきおこ》して、震動雷電……」
「さあ、出掛けよう。」
二人は肩を寒くして、コトコトと橋の中央《なかば》から取って返す。
やがて、渡果《わたりは》てようとした時である。
「ちょっと、ちょっと。」
と背後《うしろ》から、優《やさし》いが張《はり》のある、朗かな、そして幅のある声して呼んだ。何等の仔細《しさい》なしには済むまいと思った半日。それそれ、言わぬ事か、それ言わぬ事か。
袖を合せて、前後《あとさき》に、ト斉《ひと》しく振返ると、洋傘《こうもり》は畳んで、それは奴《やっこ》に持たした。縺毛《もつれげ》一条《ひとすじ》もない黒髪は、取って捌《さば》いたかと思うばかり、痩《やせ》ぎすな、透通るような頬を包んで、正面《まとも》に顔を合せた、襟はさぞ、雪なす咽喉《のど》が細かった。
「手前どもで、」と男衆は如才ない会釈をする。
奴は黙って、片手をその膝のあたりへ下げた。
「そうどす。」と判然《はっきり》云って莞爾《にっこ
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