》には潜《ひそ》んで、ひそひそと身の上話がはじまろう。
故郷《ふるさと》なる、何を見るやら、向《むき》は違っても一つ一つ、首を据えて目を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》る。が、人も、もの言わず、活《いき》ものがこれだけ居て余りの静かさ。どれかが幽《かすか》に、えへん、と咳払《せきばらい》をしそうで寂《さみ》しい。
一頭《ひとつ》、ぬっと、ざらざらな首を伸ばして、長く反《そ》って、汀を仰いだのがあった。心は、初阪等二人と斉《ひと》しく、絹糸の虹を視《なが》めたに違いない。
「気味の悪いもんですね、よく見るといかにも頭つきが似ていますぜ。」
男衆は両手を池の上へ出しながら、橋の欄干に凭《もた》れて低声《こごえ》で云う。あえて忍音《しのびね》には及ばぬ事を。けれども、……ここで云うのは、直《じか》に話すほど、間近な人に皆聞える。
「まったく、魚《うお》じゃ鯔《ぼら》の面色《かおつき》が瓜二つだよ。」
その何に似ているかは言わずとも知れよう。
「ああああ、板の下から潜出《もぐりだ》して、一つ水の中から顕《あらわ》れたのがあります。大分大きゅうがすせ。」
成程、たらた
前へ
次へ
全104ページ中55ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング