膝を浮かして、ちょっと考えるようにしたっけ。その手拭を軽く持って、上気した襟のあたりを二つ三つ煽《あお》ぎながら、可愛い足袋で、腰を据えて、すっと出て行く。……
 私は煙草《たばこ》がなくなったから、背後《うしろ》の運動場《うんどうば》へ買いに出た。
 余り見かねたから、背後《うしろ》向きになっていたがね、出しなに見ると、狂犬《やまいぬ》はそのまま膝枕で、例の鼾で、若い手代はどこへ立ったか居なかった。
 西の運動場には、店が一つしかない。もう幕が開く処、見物は残らず場所へ坐直《すわりなお》している、ここらは大阪は行儀が可いよ。それに、大人で、身の入《い》った芝居ほど、運動場は寂しいもんです。
 風は冷《つめた》し、呼吸《いき》ぬきかたがた、買った敷島をそこで吸附けて、喫《ふ》かしながら、堅い薄縁《うすべり》の板の上を、足袋の裏|冷々《ひやひや》と、快《い》い心持で辷《すべ》らして、懐手で、一人で桟敷へ帰って来ると、斜違《はすかい》に薄暗い便所が見えます。
 そのね、手水鉢《ちょうずばち》の前に、大《おおき》な影法師見るように、脚榻《きゃたつ》に腰を掛けて、綿の厚い寝《ね》ン寝子《ねこ》
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