》常《つね》の人より長く、腰しまりて肉置逞ましからず、尻付豊かに、物腰衣裳つきよく姿に位《くらゐ》備《そな》はり、心立おとなしく女に定まりし芸優れて、万に昧《くら》からず、身に黒子《ほくろ》一《ひとつ》も無《な》き、)……曲線に依りて成りたちたる一個の物体ありとして、試みに渠《かれ》が盛装《せいさう》して吾人《ごじん》に見《まみ》ゆるまでの順序を思へ、彼女は先ず正に沐浴して、其天然の麗質玉の如きを磨くにも左の物品《しな》を要するなり、曰、
 手拭、垢擦《あかすり》、炭(ほうの木)、軽石、糠、石鹸《シヤボン》、糸瓜《へちま》。
 これを七ツ道具として別に鶯の糞と烏瓜とこれを糠袋に和して用ふ、然る後、化粧すべし。

     白粉《おしろい》、紅《べに》

 の二品あり、別に白粉下《おしろいした》といふものあり。さて頭髪《かみ》には種類多し、一々|枚挙《まいきよ》に遑《いとま》あらず、今本式に用ゐるものを

     島田《しまだ》、丸髷《まるわげ》

 の二種として、これを結ぶに必要なるは、先づ髷形《わげがた》と髢《かもじ》となり。髢にたぼみの小枕《こまくら》あり。鬢《びん》みの、横《よ
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