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※[#歌記号、1−3−28]気転きかして奥と口。
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お蔦 (拍手《かしわで》うつ。)
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天神様、天神様。
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早瀬 何だ、ぶしつけな。
お蔦 (それには答えず)やどをお頼み申上げます。
早瀬 (ほろりと泣く。)
お蔦 (行《ゆ》きかけつつ)貴方、見ていて下さいな、石段を下りるまで、私一人じゃ可恐《こわ》いんですもの。
早瀬 それ見ろ、弱虫。人の事を云う癖に。何だ、下谷《したや》上野の一人あるきが出来ない娘じゃないじゃないか。
お蔦 そりゃ褄《つま》を取ってりゃ、鬼が来ても可《い》いけれども、今じゃ按摩《あんま》も可恐《こわ》いんだもの。
早瀬 可《よ》し、大きな目を開《あ》いて見ていてやる。大丈夫だ、早く行《ゆ》きなよ。
お蔦 あい。
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※[#歌記号、1−3−28]互に心合鍵に、
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早瀬見送る。――お蔦|行《ゆ》く。――
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