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※[#歌記号、1−3−28]はれて逢われぬ恋仲に、人に心を奥の間より、しらせ嬉しく三千歳《みちとせ》が、
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このうたいっぱいに、お蔦急ぎあしに引返す。
早瀬、腕を拱《こまぬ》きものおもいに沈む。
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お蔦 (うしろより)貴方、今帰ってよ。兄さん。
早瀬 ああ。
お蔦 私は……こっちよ。
早瀬 おお早かったな。
お蔦 いいえ、お待遠さま。……私、何だか、案じられて気が急《せ》いて、貴方、ちょっと顔を見せて頂戴(背ける顔を目にして縋《すが》る)ああ(嬉しそうに)久しぶりで逢ったようよ。(さし覗《のぞ》く)どうしたの。やはり屈託そうな顔をして。――こうやって一所に来たのは嬉しいけれど、しつけない事して、――天神様のお傍《そば》はよし、ここを離れて途中でまた、魔がさすと不可《いけ》ません。急いで電車で帰りましょう。
早瀬 お前、せいせい云って、ちと休むが可《い》い。
お蔦 もう沢山。
早瀬 おまいりをして来たかい。
お蔦 ええ、仲町《なかち
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