わ》す)ちょいとお花見をして行《ゆ》きましょうよ。……誰も居ない。腰を掛けて、よ。(と肩に軽く手を掛ける。)
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※[#歌記号、1−3−28]|慥《たしか》にここと見覚えの門の扉《とぼそ》に立寄れば、(早瀬、引かれてあとずさりに、一脚のベンチに憩う。)
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お蔦 (並んで掛けて、嬉しそうに膝に手を置く)感心でしょう。私も素人になったわね。
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※[#歌記号、1−3−28]風に鳴子《なるこ》の音高く、
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時に、ようようと蔭にて二三人、ハタハタと拍手の音。
[#ここで字下げ終わり]
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お蔦 (肩を離す)でも不思議じゃありませんか。
早瀬 何、月夜がかい。
お蔦 まあ、いくら二人が内証だって、世帯を持てば、雨が漏っても月が射《さ》すわ。月夜に不思議はないけれど、こうして一所におまいりに来た事なのよ。
早瀬 そうさな、不思議と云えば不思議だよ、世の中の事は分らないものだからな。
お蔦 急に雪でも降らなけりゃ可
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