》なら、あれとか、きゃッとか声を立てますのでございますが、どう致しましたのでございますか、別に怖いとも思いませんと、こう遣って。」
と枕に顔を仰向《あおむ》けて、清《すず》しい目を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》って熟と瞳を据えました。小宮山は悚然《ぞっ》とする。
「そのお神さんが、不思議ではありませんか、ちゃんと私の名を存じておりまして、
(お雪や、お前、あんまり可哀そうだから、私がその病気を復《なお》して上げる、一所においで。)
と立ったまま手を引くように致しましたが、いつの間にやら私の体は、あの壁を抜けて戸外《おもて》へ出まして、見覚《みおぼえ》のある裏山の方へ、冷たい草原の上を、貴方、跣足《はだし》ですたすた参るんでございます。」
十
「零余子《むかご》などを取りに参ります処で、知っておりますんでございますが、そんな家《うち》はある筈《はず》はございません、破家《あばらや》が一軒、それも茫然《ぼんやり》して風が吹けば消えそうな、そこが住居《すまい》なんでございましょう。お神さんは私を引入れましたが、内に入りますと貴方どうでございましょう、土
前へ
次へ
全70ページ中31ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング